工務店・リフォームの表現ガイド
工務店の施工事例ページの作り方|写真・前後比較・お客様の声で気をつけること
この記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。
施工事例は、工務店やリフォーム会社のホームページで、依頼を考える人が仕上がりや費用を確かめるページです。写真の出所、前後比較の見せ方、お客様の声の載せ方には、表示のルールと権利の両方がかかわります。消費者庁・文化庁などの公表資料をもとに整理します。
価格・補助金・無料点検などの表現は、リフォーム・工務店のLPで避けたい表現と言い換えにまとめています。
結論(この記事の要約)
- 施工事例の欄には、自社が施工した工事の写真だけを載せます。他社・カタログ・素材・生成AIの画像は使いません
- 「施工事例」の写真に「写真はイメージです」と小さく添えても、打ち消せないことがあります
- 前後比較は、同じ物件を同じ位置・近い条件で撮った、加工していない写真に限ります
- 他人が撮った写真は許諾なく使いません。お施主様の家の写真は、掲載の同意を得て、位置情報を消してから載せます
- 1件ごとに、工事内容・地域・築年数・工期・税込の費用と内訳・写真の条件をそろえます
- お客様の声は効果ではなく説明や配慮の感想にし、星の数を指定した口コミ特典は使いません
何が問題になるか
他社・素材・AIの画像を施工事例にする
景品表示法は、サービスの内容を実際より著しく良く見せる表示(優良誤認)を禁止しています。施工事例は「この会社がこの工事をした」という表示です。他社の施工写真、メーカーのカタログ写真、素材サイトの室内写真を施工事例として並べると、自社の実績や技術を実際より良く見せることになり、優良誤認のおそれがあります(筆者の解釈)。
生成AIで作った室内や外観の画像も同じで、実在しない施工を見せることになります。実際の施工写真でも、生成AIで傷を消したり、家具や青空を足したりすれば、実物と違う写真になります(筆者の解釈)。また、文化審議会の小委員会の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日)は、AIで生成した画像でも、既存の画像との類似性と依拠性が認められれば著作権侵害になりうるとしています。
注記で済ませられるかも問題です。消費者庁の打消し表示の報告書(2017年)は、強調した表示と注記の内容が矛盾する場合は、景品表示法上問題となるおそれがあるとしています。「当社の施工事例」の写真に「写真はイメージです」と小さく添えるのは、この矛盾にあたると考えます(筆者の解釈)。素材サイトの中には、成功体験や購入者の声などに見せる「なりすまし」の使い方を、利用規約で禁止しているところもあります。
消費者庁の一覧(2023年3月22日現在)に、リフォーム工事の公正競争規約(業界の表示ルール)はありません。不動産の規約の施行規則(第9条)は、事情があって他の建物の写真を使うときはその旨を写真に接する位置に書き、CGや完成予想図はその旨を明示するとしています。リフォームには直接かかりませんが、施工事例の目安になります(筆者の解釈)。
前後写真の撮影条件
厚生労働省の施術所向けのガイドライン(2025年2月18日)は、撮影条件や被写体の状態を変えた前後写真で効果を強調することを誇大とし、加工・修正した前後写真は虚偽として扱うべきとしています。業種は違いますが、前後の差から受ける印象は、工事の写真でも同じと考えられます(筆者の解釈)。別の建物の写真を前後に並べれば、存在しない施工を示すことになります。
前後比較を載せるなら、次の条件をそろえます(筆者の解釈)。
- 同じ物件を、同じ位置・向き・画角で撮る
- 明るさ・時間帯・天気をそろえる。外観は、季節や天気で印象が大きく変わる
- 仕上がりを変える加工をしない。表札などを隠す処理をしたときは、そう書く
- 工事内容・工期・費用を、写真と同じ画面に書く
- 条件がそろわなければ、施工後の写真だけにする
筆者が2026年10月2日に見た工務店・リフォーム会社のサイト7件でも、前後比較が中心なのは外壁塗装の1件だけでした。
他人の写真を許諾なく使う
文化庁の「著作権テキスト」(令和8年度版)は、写真の著作物の例に肖像写真・風景写真・記録写真を挙げ、スマートフォンで撮った写真も著作物になりうるとしています。インターネットへのアップロードは公衆送信権の対象で、無断でアップロードすると権利侵害になると説明しています。
他社のサイトやSNS、メーカーのカタログの写真は、許諾なく使いません。お施主様や外部のカメラマンが撮った写真も、撮った人の許諾を得て使います。
お施主様の家の写真は、著作権とは別に、掲載の範囲(サイト・SNS・チラシ)と期間、取り下げの方法について、書面で同意をもらうと安心です(筆者の解釈)。表札、車のナンバー、ご家族、郵便物、隣の家が写らないようにします。情報処理推進機構(IPA)は、自宅で撮った写真には位置情報が含まれることがあり、住所が特定できると注意しています(2025年7月)。公開前に位置情報を消します。
お客様の声と口コミ特典
消費者庁の打消し表示の報告書(2017年)は、体験談に「個人の感想です」と添えても、「大体の人に効果がある」という受け取り方はほとんど変わらないとしています。リフォームでは「冬でも暖かくなった」「光熱費が半分に」といった声がこれにあたりえます(筆者の解釈)。声は、説明・報告・工事中の配慮についての感想にします。
2023年10月1日から、広告であることを隠した表示(ステルスマーケティング)は景品表示法違反になりました。消費者庁のQ&Aは、星5を付けることを条件にした特典は、事業者が表示内容を決めているので「事業者の表示」に当たるとしています。投稿内容の指示がなければ、告示に違反しないと考えられるとしています。2024年6月6日には、地図サービスに星4〜5を投稿することを条件に割り引いていた診療所に、この告示による初めての措置命令が出ました。
同じQ&Aは、好意的な感想だけを選んで載せると「事業者の表示」に当たり、無作為に選んで載せる場合は当たらないとしています。自社のサイトなら事業者の表示であることは明らかですが、選び方と謝礼の有無を声の近くに書くと誤解を避けやすくなります(筆者の解釈)。
施工事例1件に書く項目
筆者が見た7件では、費用・工期・地域・築年数の4つがそろう施工事例はありませんでした。1件ごとに次の項目を同じ順で並べると、読み比べやすくなります。
| 項目 | 書き方の例 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 工事の内容 | 浴室をユニットバスに入れ替え、手すりを付けた | 「暖かくなる」など、性能や効果は書かない |
| 地域・建物 | ◯◯市◯◯町/木造2階建て・築31年 | 番地や建物名は書かない。外観写真で家が特定されないようにする |
| 工期 | 5日(浴室が使えなかった期間:5日) | 工事中の暮らしへの影響も書く |
| 費用 | 132万円(税込)と、本体・取り外しと処分・設備・仕上げ・諸経費の内訳 | その事例の実額として書く。補助金を受けた事例は、総額と補助額を分ける |
| 含まれないもの・追加 | 床下の補修は着工後に見つかり、写真でご説明してから追加した | 追加や別途の工事も書く。「追加費用なし」とは書かない |
| 写真の条件 | 当社撮影・2026年5月・加工なし | 前後比較は同じ位置・同じ条件の写真だけ |
| 掲載の同意 | お施主様の同意を書面でいただいています | 掲載の範囲・期間・取り下げ方を決めておく |
事例の費用は、その工事でかかった実際の金額です。工事メニューの「費用の目安」とは分けて書きます。目安の示し方は、前の記事で説明しています。
NG例と言い換え例
| 避けたい書き方(例) | 理由 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 他社・カタログ・素材の写真に「施工事例」と付ける | 自社の施工と誤認させるおそれがあり、他人の写真には許諾が要ります | 自社で撮った施工写真だけにする |
| 生成AIの室内画像を「施工例」にし、小さく「AI生成」 | 実在しない施工に見え、注記で打ち消しにくいと考えます(筆者の解釈) | 事例の欄では使わない。提案用の画像は「完成予想のイメージ(CG)」と画像に接して書き、事例と分ける |
| 施工写真の傷や電線をAIで消し、空を青く差し替える | 実物と違う仕上がりに見えます(筆者の解釈) | 加工しない。隠すのは個人が特定される部分だけにし、その旨を書く |
| 別の建物の写真を並べた「施工前→施工後」 | 存在しない施工を示すことになります | 同じ物件・同じ位置で撮った写真だけにする |
| 「コミコミ98万円・追加費用なし」 | 別途の工事があれば事実と違います | 「98万円(税込)。うち床下の補修4万円は、着工後に写真でご説明してから追加」 |
| 事例の最も安い金額を「トイレ交換◯万円〜」に使う | 1件の実額が、どの家にも当てはまる価格に見えます(筆者の解釈) | 事例は「この工事の実額」と書き、目安は範囲で示す |
| 「冬でも暖かくなりました」「光熱費が半分に」 | 効果の体験談は、注記があっても受け取り方が変わりにくいとされています | 「床下の写真を見せてもらえて、納得して決められました」 |
| 「星5の口コミで次回1万円引き」 | 星の数を指定した特典は「事業者の表示」に当たります | 「ご感想をお聞かせください(評価は自由です)」とだけ伝え、特典と切り離す |
| 謝礼を渡した声を、一般の声として載せる | 謝礼の事実が読む人に分かりません | 「掲載にご協力いただいた方に謝礼をお渡ししています」と併記 |
サンプルLPの紹介
「すみいと工務店」は、ミセノマドが作った工務店のLPのデザインサンプルです。施工事例の欄は、写真を使わずに作りました。
- 欄の冒頭に、図はイラストであることを書きました
- 工事後の間取りや設備を線のイラストで示し、前後比較にはしていません
- 各事例に地域・建物・築年数・工期・税込の費用を並べ、内訳を帯グラフと一覧で示しました
- お客様の声はアイコンと年代・地域だけにし、見積書や工事中の報告についての感想にしました
実際の案件では、イラストの位置に依頼者が撮った施工写真を入れる想定です。
まとめ
- 施工事例には自社の施工写真だけを使う
- 前後比較は、同じ物件・同じ条件・加工なしの写真がそろうときだけにする
- 他人の写真は許諾なく使わず、お施主様の同意と位置情報の削除を確かめる
- 声は説明や配慮の感想にし、選び方と謝礼を書く。星の数を指定した特典は使わない
生成AIを使った場合は、AIで作ったLP・ホームページを公開前に見直す12項目もあわせてご覧ください。
ミセノマドのLP制作では、ガイドラインに沿った表現の自主チェックを行い、気になる表現の理由と言い換え案をお伝えしています。ご相談はココナラで受け付けています(サービスの案内)。
注記
- この記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の判断は専門家や所管の窓口にご確認ください。
- 「筆者の解釈」と書いた部分は、公表資料をもとにした一般的な解釈で、行政の判断ではありません。
- 内容は、2026年10月5日までに確認した資料にもとづいています。ガイドラインや法令は改正されることがあります。
- 実在のサイトの傾向は、筆者が2026年10月2日に見た7件の結果で、業界全体を示すものではありません。
- 「AIと著作権に関する考え方について」に法的な拘束力はないとされています。
- 写真の利用許諾書や掲載同意書の文面は、この記事の範囲外です。
出典
- 消費者庁「優良誤認とは」
- 消費者庁「打消し表示に関する実態調査報告書」(2017年)
- 消費者庁 ステルスマーケティング(規制の案内/Q&A)
- 消費者庁「令和6年度 景品表示法等の運用状況」(2025年5月29日)
- 消費者庁「公正競争規約が設定されている業種」(2023年3月22日現在)
- 不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」第9条(2022年9月1日変更)
- 厚生労働省「あはき・柔整広告ガイドライン」(2025年2月18日)
- 文化庁「著作権テキスト」(令和8年度版)
- 文化審議会の小委員会「AIと著作権に関する考え方について」概要(2024年3月15日)
- 情報処理推進機構(IPA)「知っておきたい用語や仕組み」(2025年7月)
- 素材サイトの利用規約(2026年8月27日更新版)